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ノットジュリアについて

ABOUT NOTGIULIA

ノットジュリアが美しい靴だけを販売することに情熱をもち続ける理由

「女性を最も美しく魅せることができるのは靴である。」そう信じて疑わない私たちが、南ヨーロッパを中心に美脚をかなえるための靴を探し回るこれまでの軌跡の一部をお伝えさせてください。

PART

01

美しい靴との出会い

MEET WITH
BEAUTIFUL SHOES

2011年盛夏。うだるような暑さの中、洒落た人々が行き交う街の中心にそびえたつホテルのロビーに入った。キンキンに冷えたロビーに、むしろ生き返ったような気分になりながら、辺りを見回すとすぐに展示会の案内が目に入った。2週間ほど前、商社の知人から教えてもらったイタリアの靴の展示会。去年までファッション業界で働くなど思いもよらなかった自分には、都内でイタリアの靴メーカーが一同に集結する展示会が開かれているなど思いもしなかった。

現在、世界の靴の生産量は210億足。その中で60%を中国が占め、ダントツの生産量。2位のインドとあわせて実に70%以上を生産する。その中でイタリアはわずか1%に満たない。
しかし、世界の1%に満たないこの国が、女性を魅了し続けるブランドシューズを独占している。フェラガモ、グッチ、ジミーチュウ、そしてクリスチャン・ルブタン。最高峰のシューズブランドたちは、世界の靴を生産している99%に依頼はしない。依頼するのは、イタリア、そしてスペインだけだ。そのイタリアで作られたこれらのブランドの靴たちは、中国やインド製の少なくとも10倍の金額で販売され、100倍の金額も珍しくはない。
そして、それでも、世界中の女性達は、こぞって買い求める。それはなぜだろうか?ただの伝統か?ヨーロッパへの憧れだろうか?それだけに100倍の金額を払えるのか?それなりにファッションにこだわりをもっていると思っている自分でさえ、100倍の価値を本当に理解できているとは到底思えなかった。

足早にエレベーターにのり、展示会場に向かう。黒いスーツに身を包んだ、品のいい女性達がうやうやしくお辞儀する。いつもは宿泊用のホテルルームに1部屋に1ブランド、イタリアの靴メーカーが新作の靴をところ狭しと並べている。そんなフロアが5フロア分。100近いイタリアのブランドが集まっているようだった。
いくらビジネスとはいえ、ホテルで知らない人の部屋に入るのは少なからず緊張する。それは、待ち受けるイタリア人のほうも同じようで、部屋に入り目が合うと、ある人はなにもいわずに目をそらし、ある人は軽く会釈する。そんな中、人懐っこい笑顔を浮かべて、「チャオ!」と大きく挨拶する大柄な男性の部屋に入った。
こちらもがんばって、慣れない笑顔で挨拶をし、並んでいるパンプスに目を移した。もちろん、私もイタリア製の靴を見たことがないわけではない。それでも、これだけの色とりどりのパンプスが並んでいる光景は実に壮観だ。その中で、ハイヒールのパンプスを手に取る。深紅のエナメルが、艶やかにライトの光に照らされていた。

(本当に美しい。。)

もしかしたら、少し見とれて、ぼーっとした顔をしていたのかもしれない。顔を上げると、大柄なイタリア人がにこにこしながら、こちらを見ていた。そして、隣にいた通訳の女性に話しかける。イタリア人は情熱的というが、たしかに身振り手振りが激しいようだ。通訳の女性がこちらを向くと、落ち着いた日本語で話し始める。

ノットジュリアの軌跡 イラスト1

「そのパンプスのヒールをご覧ください。かかとよりも少し前のほうについていませんか?それは、脚の重心の下になるので、歩行のときに歩きやすいんですよ」
確かに、かかとからまっすぐではなく、少し内側に入っているようだ。それは機能的に作られているだけなのかもしれないが、私には、かかとからヒールへのラインが、女性のウエストのくびれのように色っぽくも見えて、深紅のドレスを着た淑女にも見えてきた。

「すごく素敵な赤色ですね。深みがある」
通訳を通して聞いた彼は、満足そうにうなづき、
「そこのタンナーのレザーは、世界的な一流ブランドも使うエナメルレザーにも使われている。染色もすごく味のある、光の加減でも色が変わる見事なRosso(赤色)だよ」
確かに、イタリアは一流ブランドの本場だ。フランスやイギリスの有名ブランドも靴裏には必ず<made in Itlay(メイド・イン・イタリー)>と刻印されている。私たちが知らないこういったブランドもそうした一流ブランドと変わらない素材を使い、熟練のイタリア職人が作っていてもおかしなことではない。

イタリアやスペインでは、皮革産業に従事する人口の割合が日本や諸外国と比べても圧倒的に多い。そして、ひとつひとつが小規模の家族経営が多いので、業者の数もとても多い。ヨーロッパだけでなく、世界中で憧れとなるイタリア製と刻印されたパンプスは、ただの伝統ではなく、多くの靴メーカーや工房がしのぎを削り、熾烈な競争を勝ち残った結果なのだ。
日本に置き換えてみても、こんな小さな島国にこれだけの世界的な自動車メーカーがひしめき合っている。だから、世界でトップの自動車大国になりえた。同じところで切磋琢磨できるライバルの存在。それがイタリアを靴産業の一流国へと押し上げ、世界のメゾンブランドの生産を独占している理由なのかとおもうと妙に納得してしまう。

一人で感心していると、気を良くしたのか彼は続けた。
「日本には、スペースの関係で、これだけしかもってこれなかったが、もしよかったら、来月のミラノでおこなう展示会にくるといい。もっとたくさんの靴を紹介できるよ。」

ノットジュリアの軌跡 イラスト2

ミラノの展示会?革靴の最高峰の国で行われる展示会だ。とても気になった。詳しく話しをきいてみると、年に2回ミラノでおこなわれるらしい。ミラノはファッションウィークの中で、最も早く幕を開けるミラノコレクションを基点となっている。最先端のデザインをいち早く取り入れる環境があり、世界のトレンドは、ここで決まるのだ。
イタリア有数のシューズメーカーだけでなく、スペインやドイツなどからも参加するらしい。規模は、この日本のコレクションの10倍以上。どれだけの魅力的なシューズに出逢えるのだろうと、いてもたってもいられずに、私はすぐにミラノ行きの航空券とホテルを予約した。

PART

02

美しい女性との出会い

MEET WITH
A BEAUTIFUL WOMAN

うだるような暑さも落ち着きを見せ始めた9月の中ごろ、私はミラノのとあるカフェにいた。東京のようなじめっとした湿気をおびていない地中海性気候は、すごく爽やかな気分にしてくれる。隣にいる鮮やかなブルーのワンピースに身を包み、大きめのサングラスをした女性が、そんな爽やかなテラスによく似合っていた。濃いめのエスプレッソをちょっとずつすする。何度飲んでもとても苦いが癖になる。運河が見えるオシャレな中庭の椅子に腰をかけ、4日間の展示会に思いを馳せる。

後ろから、男性の声が聞こえた。男性は、私の隣にいる女性のもとに駆け寄ってきた。微笑みながら、立ち上がる女性。足元のエレガンスなネイビーのハイヒールがブルーのワンピースと合っていた。
手をとりエスコートする男性に連れられて、カフェを後にする二人の背中を眼で追いながら、ある言葉を思い浮かべた。

“隙をつくり、男性に女性のためにしてあげることを見つけさせるのがいい女である。”

ノットジュリアの軌跡 イラスト3

ミラノで開かれた4日間の靴の展示会は圧巻の一言だった。
日本で最も大きい展示会場の5-6倍のスペースが靴で覆い尽くされていた。イタリア、スペイン、ドイツなどのヨーロッパだけでなく、トルコ、ブラジルなどからも自慢の靴をひっさげ、素敵なブースを作りこむ。この世界最高峰の展示会に出展するだけでも、ブランドにとっては名誉なことだ。
日本の展示会も審査はあるが、こういった世界的な展示会に出展する審査基準は厳しい。お金を払ってスペースを貸しているのではなく、何千というブランドが統一して、その展示会のコンセプトを作り上げている。そのため、どんな靴をつくっているのか、どういう人に向けて売っているのか、そういった思いが展示会とそこにくるバイヤーの審美眼にふさわしくないブランドは出展することができない

このミラノの展示会で、私は多くのブランドと出会い、そして私たちのお店に似合う靴をセレクトし、買い求めた。折れそうなほど繊細なピンヒールも、がっちりとした太いチャンキーヒールも、女性らしいポインテッドも、足の指先が少しだけ見え隠れする浅いアッパーのラウンドトゥも、足を入れた瞬間に心躍るパンプスやサンダルをセレクトした。
足を棒のようにしながら、セレクトしては、買い付けた4日間。いよいよ、展示会の終わりまであと数時間。心の充実と体力の限界を感じながら、帰ろうと踵を返すと、ある一つのブースが目の前に飛び込んできた。
周りと比べて、やや大きめのブース。扉が閉まっており中が見えないが、ブースの作りからセンスの良さが伺えた。そのブランドはスペインのブランドのようだったが、知っているブランドではなさそうだった。

もうすでに今度の春夏に必要な靴は買い揃えていた。それでも、このブースがとても気になった。中に入らないで帰っては後悔しそうだと、扉の前で暇そうにたつ美女に名刺を渡し、私はブースの中に足を踏み入れた。思わず、足を留める。
目を奪われるとはこういうことを言うのだろうか。繊細で独特のカラーリング、他にはないデザイン、そして、そこで働く女性の美しさ。展示会のブースの中でも別格に近い存在感。靴が好きな女性なら、決して見過ごすことのできないパンプスがそこにはあった。

ノットhジュリアの軌跡 イラスト2

「素敵だけど、あのヒールの高さを履いたら、まともに歩けない」
笑いながら、私は首をふった。
「あら、男性にエスコートしてもらうのだから、関係ないじゃない」
アンジェラも笑う。
聞くと、12cmものハイヒールで長時間歩く人はヨーロッパにもいない。パーティやレストランにつく瞬間に履き替えるという。

「儚げな女性の手をとりエスコートする瞬間は、男性にとってとても幸せな時間よ。手をとる隙を作り出してあげるのは女性の役目だわ」
とアンジェラは続けた。

確かに、女性のセクシーの象徴はヒップラインだ。日本では、女性の胸にときめく男性も多いが、バストは母性の象徴、すなわち子供の憧れである。成熟した男性は女性のヒップラインで、いい女かどうかを無意識に識別する。それは生物としての本能であり、理屈ではないと思う。そしてその豊かなヒップラインを揺らすのは、脚なのだということ。不安定な10cm以上のヒールから伸びる脚とゆれるヒップがなければ男性はこんなにも女性を追い求めるのだろうか?

むかし、ある男性からこんなことを聞いたことがある。
「男性は女性のことをいつも考えて行動している。女性は自分のことをいつも考えて行動している。だから人間はいつも女性のことを考えて行動しているんだ」
そう考えると、男性が女性のためになにかをするのは、むしろ嬉しいことなのかもしれない。そして、その嬉しい気持ちにさせてあげるためには、「隙(すき)」をつくってあげなくてはいけない。その隙をつくるために存在するのがハイヒールなんだろう。
スニーカーやぺたんこなローファーは日常生活に欠かせない。でも、不安定なハイヒールがもたらす儚くもエレガンスに演出された女性の手をエスコートすることは男性の至福の時間だ。ハイヒールで歩く女性をエスコートする男性に自分はとても良いことをしていると思わせておけば、ハイヒールが世界を平和にするって考えもそんなにバカげてはいないのかもしれない。

そんなどうでもいいことを考えながら、私は、このスペインのブランドと契約して、アンジェラと握手し、ブースを後にした。

購入したパンプスは、7cmと9cmヒールのパンプスだった。
まだ、日本の男性がそんな素敵にエスコートしてくれるとは信用していないのかもしれない。